ここでは法人化(株式会社・合同会社など)ではなく、個人事業主として開業した場合にかかる費用と確定申告で節税するための経費のお話をします。
また、実際にわたしが開業したときにかかった費用も公開します。
職業はIT・Web事業なので、飲食店など業種が全く違う人とは必要な物や金額も変わってくると思いますが、共通している所だけでも参考にしてください。
起業前の資金準備は大切なので、しっかりと把握しておきましょう。
個人事業主の開業に必要な手続きと費用
個人事業主は会社を設立する法人化と違って開業の手続きは非常に簡単で費用もかかりません。
実際に個人事業主になるために必要な書類とそれにかかる費用について紹介します。
個人事業の開業・廃業等届出書
まず個人事業主になるために必要なのが、「個人事業の開業・廃業等届出書」で、費用はゼロ。不要です。
この個人事業の開業・廃業等届出書は、事業開始から1か月以内に管轄する税務署に提出する必要があります。
ちなみに、事業開始の時期は自分で好きに決めることができるため、縁起のいい日やお店であれば開店日などに合わせても良いでしょう。
ちなみにわたしは会社員としての籍が3月31日までだったので、翌日の4月1日を事業開始日と決め、その日に開業届を提出しました。
この開業届の入手方法は、
- お住いの地域の税務署に取りに行く
- 国税庁のウェブサイトからダウンロードする
- freeeなど会計ソフトで作成する
いずれかお好きなものでOKです。
ちなみに開業届提出には以下のものが必要です。
- 印鑑(認めでもOK)
- 個人番号(マイナンバー)が分かるもの
- 本人確認書類(運転免許証など)
記入した開業届を税務署に持っていくのですが、時間がないなど行くのが難しい人は郵送で送ることも可能です。
その際は、開業届2部(提出用の正本と控え)のほか、個人番号(マイナンバー)が分かるもの、本人確認書類(運転免許証など)、さらに控えの返送を受けるため、郵便切手を貼り付けて自らを宛先として記載した返信用封筒を同封する必要があります。
国税庁のホームページに、本人確認書類を張り付けるための台紙があるのでダウンロードしてください。
開業届自体の費用はゼロですが、郵送の場合は切手代、返信用封筒代がかかりますね。といっても、数百円くらいなので問題ないでしょう。
所得税の青色申告承認申請書
開業届と一緒に提出しておきたいのが、青色申告承認申請書です。こちらももちろん費用はゼロ。
青色申告承認申請書も開業届と同じく、
- お住いの地域の税務署に取りに行く
- 国税庁のウェブサイトからダウンロードする
- freeeなど会計ソフトで作成する
ことが可能です。
どういったメリットがあるかというと、
- 65万円の特別控除、10万円控除が受けられる
- 赤字を3年間繰り越すことができる
- 家族を雇った場合、給与が全額必要経費になる
- 30万円未満の減価償却資産を一括経費にできる
- 自宅をオフィスにすると家賃や電気代の一部を経費にできる
などです。ただし帳簿付けを行わないといけないため、手間はかかります。
でも会計ソフトを使えば簡単にできるので、一緒に提出しておいたほうがいいでしょう。
おすすめの会計ソフトはこちらで紹介しています。
以上、開業届、所得税の青色申告承認申請書が個人事業主としての開業に必要な書類であり、費用はかかりません。
個人事業主になるにあたって買ったものと費用の公開
では開業届以外に、実際に自分の事業にかかる費用はどれくらいなのか?ここはしっかりと把握しておいたほうがいいですね。
ただ飲食店や美容師、コンサル、Webデザイナーなど職業によって必要な設備や備品は異なるので、一概にいくらかかるとは言えません。
ここではITやWebの仕事をしているわたしが、実際に起業するために準備したものやそれにかかった費用を紹介します。
共通するものがあるかもしれませんので、参考にしてみてください。
開業前に買ったものとかかった費用
細かなものもありますが、参考としてみてください。また価格は分かりやすいよう四捨五入しております。
退職した会社へのお礼品(靴下、ハンカチ) | 7,000円 |
パソコン代 | 21万円 |
A4複合機(コピー、プリント、スキャナ) | 33,000円 |
ホームページ制作費 | 20万円 |
名刺代100部 | 20,000円 |
チラシ代100部 | 50,000円 |
名刺入れ | 6,000円 |
名刺用の写真撮影 | 10,000円 |
業務用印鑑(代表印、銀行印、角印、スタンプ印) | 33,000円 |
コピー用紙など事務用品 | 1,000円 |
ビジネスシューズ | 7,500円 |
会計ソフト(freee年払い) | 24,000円 |
合計 | 601,500円 |
また私の場合、地方で仕事をするので業務専用車も買いたかったのですが、初期コストを抑えるためにとりあえず我慢しました。
あとわたしの仕事場は自宅なので、別途事務所を借りる人は敷金、家賃なども必要になるでしょう。
開業後に買ったものとかかった費用
こちらは開業後、半年間でかかった費用です。基本的に開業前に必要な物はそろっているので、大きな出費はないと思います。
訪問先への差し入れ | 20,000円 |
参考書 | 2,000円 |
名刺代100部 | 5,000円 |
チラシ印刷 | 10,000円 |
広告費 | 20,000円 |
コピー用紙など事務用品 | 3,000円 |
合計 | 60,000円 |
お客さんに挨拶に行くときにお菓子など差し入れを持っていったところがあるのでその費用と、名刺とチラシの再印刷、あと地元の新聞などへの広告掲載費などです。
また上記とは別に、ランニングコストとして必要な国民健康保険、国民年金はもちろん事業を続けていれば、家賃やガソリン代などもかかってきます。
補足で、国民健康保険は試算したら55,000円/月、国民年金は16,410円/月でした。これがかなり高額で負担が大きいです。
事業開始後に毎月ランニングコストがいくらかかるか試算し、把握しておいたほうがいいでしょう。
個人事業主が経費にできるものとは?
個人事業主の経費にできるものは「事業に必要なもの」であれば認められます。
事業に必要な仕入れや外注費、事務用品など。
しっかりと経費計上することで、納める税金を減らすことができます。
ただし個人事業主の場合、事業とプライベートの支出の線引きが難しいケースもあります。
例えば、
- 携帯料金
- インターネット料金
- 自動車のガソリン代
- 自宅兼事務所の場合の家賃など
プライベートでも事業でも使うものは100%経費とすることは難しく、事業で使用する比率分のみを経費に計上する家事按分(かじあんぶん)で算出します。
例えば、自宅兼事務所として家で仕事をしている場合、自宅の全面積が100平方メートルで、6畳の1部屋(約10平方メートル)を事務所として使用しているなら、割合は10%となります。
家賃が10万円だとしたら、経費として計上できる家賃は10,000円ということです。
はっきりと事業用の支出として計上できるものはいいですが、家事按分の場合は、明確に根拠を示せるようにしておいたほうがいいですね。
法的ルールはありませんが、仮に税務署から説明を求められたときに説明できないと経費として認められない可能性が高いので。
開業前の費用は経費にできる?
起業前に参加したセミナーや参考書代、パソコン、名刺やチラシ作成、人脈作りに使った交際費など、起業に必要な物であれば経費となります。
そのためきちんと領収書は保管しておきましょう。
10万円以上のものは経費にならない?
パソコンや車など10万円以上で事業用の資産とみなされるものを減価償却資産と言います。
例えば、会社員を辞めてフリーランスになるので20万円のパソコンを買った場合。
このときパソコン代が10万円を超えているので減価償却資産とみなされます。
そして商品によって耐用年数というのが決まっており、パソコンの場合は4年。
つまり20万円÷4年=5万円/年のように、5万円を4年かけて経費として毎年計上する形になります。
ただし開業届と一緒に青色申告承認申請書を提出し、確定申告を青色で行えば30万円未満の資産でも一括して経費計上することができます。
開業にかかる費用負担を減らすため補助金を活用しよう
開業届提出には費用はかかりませんが、事業を始めるにあたって設備や事業が安定するまでの収入を補うための資金は必要です。
しばらく無収入でも生活できるだけの貯金があればいいですが、なるべく支出負担を減らすために補助金を活用してみましょう。
わたしも地元の創業補助金を利用して、パソコンなどの機器を購入しました。
創業費用の2/3(最大100万円)を補助してくれる制度があったので、かなり初期費用をおこさえることができました。
各自治体でそういった制度を行っていると思うので調べてみましょう。
また日本商工会議所が行っている小規模事業者持続化補助金もおすすめです。
こちらは創業してからしか使えませんが、機械装置等やホームページ、チラシなどの広告宣伝費を2/3(50万円まで)補助してくれます。
すべてを手出しするのではなく、こういった補助金を有効に活用してなるべく支出を抑えておきましょう。
まとめ
開業自体にお金はかかりませんが、事業に必要な経費はかかってきます。
あまり物のいらないわたしのような職種でさえ60万円ほどかかりましたので、設備や道具の必要な職業の人は、しっかりと資金計画は立てておいたほうがいいです。
一度、エクセルや紙に必要な物と金額を書き出してみると良いかと思います。
また初期費用を抑えるためにもお住いの市区町村で創業補助金がないか確認もしてみましょう。
以上、開業にかかる費用についてでした。
その他、起業に必要な手順や準備はこちらの記事にまとめています。
起業したいけど何をしていいか分からない
自由な働き方ができるフリーランスに憧れている
このようなへ経験談を書いています。
わたしは30代後半から40代に差し掛かり、これからの働き方に明るい未来を見出せずにいました。
それで転職ではなく脱サラして起業する道を選んだのですが、たくさんの疑問や悩みを相談できる人が周りにいませんでした。
もし身近に話を聞いてくれる経験者がいたらどんなに心強く、そして遠回りをせずに済んだのだろうと思います。
そこで同じような悩みを抱えている人のため、自分の経験を活かせるnoteを書きました。